はじめての野菜づくり 〜コンテナ栽培からはじめよう〜
  
 春になり、園芸店やホームセンターに行くと、いろいろな苗や種が売られており、野菜を作ってみたいという気分になります。
 しかし、庭がないといった理由であきらめている方も多いのではないでしょうか。ベランダなど、ちょっとしたスペースがあれば、コンテナ(容器)で野菜づくりを楽しめます。
 日々の成長を目で楽しみ、食べて楽しめるベランダ園芸をはじめてみませんか。


月  内容 
 4月  準備編
 5月  種から育てる野菜、苗を植える野菜
 6月  管理について
 7月  果菜類の管理について
 8月  古土の再利用について
 9月  秋冬野菜栽培について
 10月  マメ類と葉物野菜の栽培について
 11月  タマネギの栽培と種の保存方法について
 12月  肥料について
1月 (お休み・・・)
2月  農園を借りてみませんか
 3月  農園のプランニングについて

4月 準備編
  
1 準備するもの
 まず準備するものは、コンテナ、土、ジョウロです。

 コンテナは、プラスチック製のものが、安価で、軽く扱いやすいのでおすすめです。大きさは、栽培する野菜の種類で異なります。トマトなど草丈が伸びるものは、深さがある大型のものを選びましょう。

 土は、数種類の土(赤玉土、まさ土など)を、各自で混ぜて用いることもできますが、すでに混合済みの用土が販売されていますので、これらを用いると便利です。「野菜の土」などの表記のあるものを選びましょう。コンテナ栽培用に比較的軽くなるような配合となっています。

 ジョウロは、ハス口が取り外しできるものを購入しましょう。種をまいたときは、ハス口をつけて、芽が出て大きくなってからは、ハス口をはずして水やりをすることができます。

2 置き場所など
 コンテナの置き場所、置き方ですが、まず、エアコンの室外機の近くは避けましょう。熱風で植物が傷みます。また夏場は、コンクリートが熱をもち、コンテナ内の温度が上昇しやすく、根傷みの原因となりますので、コンテナの下にスノコや発泡スチロール等を置いて、風通しをよくしておきましょう。
 さらに、マンションなどでは、緊急避難用通路の確保など安全上の配慮も必要です。

 5月 種から育てる野菜、苗を植える野菜
 
 コマツナ、ベビーリーフなど、収穫までの日数が短いものや、二十日ダイコンのように根が太るものは、直接種をまいて育てます。トマトやナスなどは、種をまいてから大きくなるまでの期間が長く、管理が大変なことから、園芸店などでポット苗を購入するのがおすすめです。

1 購入のポイント
 種を買うときは、まず、種袋の裏を見ましょう。野菜の種まきには、適期があるので、時期を間違えないようにします。
 苗を買うときは、ひょろひょろの徒長した苗でなく、がっちりした苗を選んでください。害虫がついていないかなどもよくチェックしましょう。購入した苗は、なるべく早めにコンテナに植え付けますが、植え付けまでに時間が空く場合は、薄い液肥などを与えましょう。

2 種まきのポイント
 まず、土の表面をきれいにならして、平らにします。浅く溝をつくり、種をまいていきます。その後、軽く土をかけて、表面を押さえておきます。ジョウロはハス口をつけて、やさしくたっぷり水やりをしましょう。勢いよく水をやると、種が流れてしまいます。

3 苗を植えるポイント
 まず、ポットと同程度の植え穴をあけます。次にポットから出し、根を傷めないように丁寧に植え付けます。植え付けた後は、ジョウロでたっぷり水を与えます。植え付けの1〜2日前に、ポット苗に水やりをしておいて植え付けると、その後の生育が順調です。カラカラの状態で植えた場合、あとからどれだけ水やりしても、うまく根付かないことがあります。

 6月 管理について
   
1 水やりについて
 土の表面が乾いたら、コンテナ(容器)の下から水が流れ出るまで、しっかり与えます。こうすることで、土粒間の古い空気が追い出され、根に新鮮な酸素を供給することもできます。乾き方は、季節や天候などによっても違いますから、2日おきなどと決めず、乾き具合をチェックして、水を与えましょう。また、常に土が湿っている状態は、根の伸びも悪く、根ぐされなども引き起こします。乾湿のリズムをつけた水やりを心がけましょう。

2 追肥について
 野菜の成長にあわせて、肥料を与えます。コンテナ栽培の場合、土量が少ないので、一度に肥料を与えると、肥料あたりすることがあります。また、土が乾きやすく、必然的に水やりの回数が多くなるため、肥料は少量ずつ与えましょう。初心者の場合は、肥料がゆっくり効いてくる緩効性肥料を使う方が安心でしょう。施肥量や施肥間隔は、肥料袋の裏側を参考にします。また水やりを兼ねて、1週間に1回程度、液肥を与えることもできます。

3 病害虫防除について
 風通しをよくすることで、病害虫はある程度防げます。種をまいたコマツナなどは、隣どうしの葉がふれあうようになったら間引きを、トマトやキュウリなどの果菜類は、わき芽かきや、摘心を行います。
 害虫を発見した場合は、早めに割り箸などを使って駆除します。あらかじめ防虫ネットをかぶせておいてもよいでしょう。病気の場合は、広がらないように病気の出た葉を摘み取りましょう。

 7月  果菜類(キュウリ・トマト・ピーマン)の管理について

 1 誘引
 成長にしたがい、適宜、支柱やネットにヒモなどで誘引しましょう。風や果実の重みで枝が折れたり、株がぐらぐらして根が傷みます。また茎が太くなるにつれて誘引したヒモが食い込むことか゜あります。再度、ゆとりを持たせて結び直しておきましょう。

2 夏越し
 ウリ科のキュウリ、ナス科のトマト、ナス、ピーマンは、代表的な夏野菜ですが、日本原産の野菜ではありません。日本の夏は、熱帯に近い環境で、夜温も高く、また近年は猛暑続きです。個々の野菜の原産地を知りつつ、適切な管理を行いましょう。

 キュウリの原産地は、インドのヒマラヤ山麓からネパール地域で、降水量が多く、このため乾燥が苦手です。土が乾燥しないように水やりに気をつけましょう。コンテナ(容器)の表面に土を足し、土量を増やして乾きにくくするのも有効です。

 トマトの原産地は南米ペルーなどアンデスの高地で、昼夜の温度差がある、乾燥した地域です。このため、多湿を嫌います。コンテナ栽培なら、良く日があたる軒下などで管理します。

 ナスはインド、ピーマンは中央アメリカおよび南アメリカの熱帯地方原産でどちらとも高温を好みます。このため、比較的日本の夏に順応しますが、高い夜温が続くと、人間と同様夏バテします。他の野菜も同様ですが、水やりは朝・夕とし、日中には行わない、根を傷めない管理で、長期収穫をめざしましょう。

 8月 古土の再利用について

 コンテナ(容器)に入れた土は、最初はふかふかしていますが、栽培を続けていくと土が固くなり、通気性や排水性が悪くなってきます。新しい土に入れ替えるにしても、古土の処理に困ります。古土を消毒して再利用してみましょう。

1 消毒方法
 夏場の太陽熱を利用すれば、手軽に消毒することができます。
 @コンテナから古土を出し、古い根や、コンテナの下に敷いた鉢底石を取り除きます。鉢底石は洗って再利用します。
 A古土を厚手のポリ袋に入れます。この時、袋にいっぱい土をつめないようにします。また土が乾いている場合は、
  必ず水で湿らせます。
 Bポリ袋を輪ゴムでとめて密封します。気温30度以上の晴れた日が1週間程度続くときを見計らい、日当たりのよ
  いコンクリート上に放置します。

 上記の方法で、病害虫を死滅させることができます。ただし土が乾いていたり、袋の中に入れた土の量が多すぎると、熱が伝わりにくく、また気温が十分でない時期に行うと効果がありませんので、気をつけましょう。

2 再利用する場合
 消毒後の土に、腐葉土(落ち葉を腐らせたもの)等を3割程度混ぜ、利用します。

 
 9月 秋冬野菜栽培について

1 コンテナ栽培のおすすめ野菜
 コマツナ、ミズナ、シュンギク、リーフレタス、ホウレンソウ、二十日ダイコン、コカブなどの種をまいてみましょう。大型コンテナならば、キャベツ、ハクサイ、ブロッコリーも可能です。これらは苗を購入して植え付けましょう。

2 「秋の日はつるべ落とし」ということわざのとおり、秋になると日照時間が短くなり、気温も冬に向かって下がっていきます。種まきや苗の植え付けは遅れないようにしましょう。ホウレンソウやコカブなどの種まきは、秋分頃までに行えば、年内収穫が可能です。

3 種まき等の方法
 9月前半はまだ気温が高く、水やりが十分でないと、発芽不良や活着不良になることがあります。あらかじめ前日に、コンテナにたっぷり水やりをして、土を湿らせておきましょう。

 種まきの手順
 @細いまき溝をつくり、1p間隔で種をまく。
 A土をかぶせて上からから軽く押さえ、土と種を密着させる。
 B水やりは、種が流れることがないよう、はす口を上にむけて水圧を弱め、丁寧に行う。

 苗を植える手順
 @事前にポット苗に水をやっておく。
 A植穴をあけ、苗の根鉢をくずさないようにして植え付ける。
 B最後に水をやって土をおちつかせる。

4 害虫防除
 野菜の主な害虫の発生時期は、5〜6月と9〜10月頃です。油断していると、あっという間に葉がぼろぼろになってしまいます。葉裏までよく観察し、卵や害虫を見つけたら捕殺しましょう。植え付け後に、防虫ネットをかけておくと安心です。

 10月 マメ類と葉物野菜の栽培について
  
1 マメ類の栽培
 サヤエンドウ、スナップエンドウ、ソラマメなどは、秋にまき、苗の状態で冬を越し、春先から伸びはじめ、春〜初夏に花を咲かせ実をつけます。冬までに大きく成長してしまうと、寒さで枯れることがあるので、種まきは10月下旬に、苗は11月中下旬に植え付けます。
 マメ類の種は、畑に直接まくと、カラスなど鳥に食べられる可能性があり、また発芽も不揃いになることから、一般的には、ポリポット等にまいて、苗を作り、植え付けるのが基本です。ソラマメは、1ポットに1粒ずつ、へそ(種子にある黒い線の部分で、ここから根が伸びる。お歯黒とも呼ぶ。)を斜め下にして、わずかに種が見える程度まで押し込みます。エンドウは、1ポットに3粒ずつまき、間引いたりせず、3本立ちのまま植え付けます。
 コンテナ栽培の場合は、直接まくことも可能です。発芽するまでは、防虫ナットや不織布などで鳥害予防をしておくと安心です。
 サヤエンドウやスナップエンドウは、春につるが伸びてくる前に支柱を立てましょう。

2 葉物野菜の栽培
 コマツナ、ミズナ、ホウレンソウなどの葉物野菜をまいてみましょう。コマツナやホウレンソウなどは寒さにあたると植物体内の糖度が上がり、甘味が増すので、この時期の種まきがおすすめです。
 1p間隔で種をまき、最終的に株間が5〜7p間隔になるように間引きます。間引き菜はサラダ等に利用しましょう。収穫時期のおおよその目安は、10月上旬まきで年内、10月下旬まきで年明けです。25〜30pくらいの大きさで収穫します。

 11月 タマネギの栽培と種の保存方法について

1 タマネギの栽培
 11月は、タマネギの苗の植え付け時期です。深めのコンテナで栽培してみましょう。
 まず、苗選びのポイントですが、根元の部分の直径が7〜8o(えんぴつの太さ)程度の苗が最適です。太さが1p以上の大苗を植えると、大きなタマネギが収穫できるように思われますが、反対に冬の寒さに感応して、春にねぎ坊主ができることがあります。一方、細い小苗を植え付けた場合には、通常サイズより小さなタマネギが収穫できますが、苗が冬の寒さで枯れることもありますので、置き場所に注意しましょう。
 
 次に栽培のポイントです。晩秋から冬にかけては、ついつい水やりを忘れがちになります。地上部に変化がない場合でも、地上部の根は活動していますので、乾燥しすぎないように気をつけましょう。

 また追肥ですが、肥料が春遅くまで効いていると、タマネギを収穫した後、腐りやすくなり保存性が落ちます。追肥は、1月下旬と2月下旬の2回程度とし、それ以降は施さないようにしましょう。

2 野菜の種の保存方法について
 野菜の種が余った場合は、冷蔵庫もしくは冷凍庫など、温度や湿度が低い場所で保管します。冷蔵庫の場合、湿度が高い野菜室は避けてください。またビニール袋などに入れ替えると湿度が上がりますから、種袋のままか、クラフト紙でできた茶封筒などで保管します。例えばダイコンの種なら、3〜4年は十分使えます。ただし、ネギ類・ニンジンなどの種は、寿命が短いので、なるべく使い切るようにします。
 
 12月 肥料について
 
1 肥料成分について
 野菜がすくすく成長するには、肥料が必要です。植物が必要とする栄養素はいろいろありますが、そのなかでも最も重要な栄養素は、窒素、リン、カリウムで、これを肥料の三要素と言います。

 窒素は、葉肥とも言われ、不足すると葉が黄色くなるなど、生育全体が衰えてきます。リンは、実肥とも言われ、花や実の成長に影響を与えます。カリウムは、根肥とも言われ、根もの野菜の肥大には欠かせない要素です。

 市販の肥料は、これらの重要な要素をバランス良く含んでいます。肥料袋を見ると、例えば10−8−9と3つの数字が印刷されていますが、これは肥料100g中に窒素が10g(10%)、リンが8g(8%)、カリウムが9g(9%)含まれていることを表しています。

2 肥料のやり方
 コンテナ栽培の場合は、庭植えなどの場合に比べて、土の量が少ないため、一度に多量の肥料を与えると、根が傷むことがあります。必ず肥料袋に書いてある使用量を確認して与えます。また使い方ですが、土の中に混ぜ込むタイプと土の上に置くタイプの肥料があります。混ぜ込むタイプのものは、土の上に置いても、効果が出にくいので注意しましょう。
 また固形肥料以外に液体の肥料(液肥)も販売されています。水やりを兼ね、指定の倍率に薄めて使用します。肥料あたりの心配はなく、また効き目も速いのが特徴ですが、反対に肥料効果は持続しません。液肥だけで育てる場合は、こまめに与えることが必要です。

 1月 お休み・・・・・
 
 2月 農園を借りてみませんか
 
 野菜をコンテナで育てたら、今度は畑を借りて、野菜づくりに挑戦してみませんか。畑では、野菜本来の生き生きした姿を見ることができます。

1 どんなタイプの貸し農園があるか
 貸し農園にはいろいろなタイプのものがあります。
 @立地(市街地近郊や郊外) A広さ(10〜100uなど) B貸し農具の有無 C設備(駐車場、休憩所など)の有無とその内容はさまざまで、多様なニーズに応えられるようになっています。ホームページなどで、いろいろ情報を集めてみましょう。
 (公財)広島市農林水産振興センターでは、市民体験農園・市民菜園・市民農園と3タイプの貸し農園の入園を受け付けています。この貸し農園の新規利用は4月からとなっており、申込みは2月1日(平成25年度の場合)から受け付けます。

2 農園ライフの心構え
 農園で野菜づくりを始めると、夏場ならば、最低でも週1〜2回は、水やり、収穫、草取り等に通うことになります。農園は、隣りあわせで多くの人が利用しますので、自分の区画だけでなく、区画周辺も除草を行う等、農園のルール守ることも必要となります。これらのことを考慮し、現在のライフスタイルに組み込む余裕があるかを検討してみましょう。

3 農園ライフの楽しみ
 作物を育てるだけでなく、農園には新たなコミュニケーションの楽しみもあります。入園者同志で、種や苗を交換したり、栽培方法や資材・農具等の購入先を教えあったりと、野菜づくりの情報交換をすることで、充実した農園ライフが広がります。

 3月 農園のプランニング(栽培計画)について
  
 農園を借りることになったら、1年間の栽培計画を立てましょう。広さの限られた区画を有効に使うためには、事前の計画が必要です。

1 作りたい野菜の情報を知る
 作る野菜が決まったら、植付時期、栽培間隔、収穫時期等を確認します。例えば、ナスの苗の植付時期は、気温が上がってくる4月下旬〜5月上旬、植付間隔は、大きくなるため60p以上、収穫時期は6月下旬〜10月下旬です。
 また、つるが伸びるカボチャやサツマイモなどは、広い面積が必要となります。

2 区画図を書く
 畑をいくつかの区画に分けた図面を作り、1の情報をもとに、どこに何を植えるのか、何株植えるのか等を書いてみましょう。
 さらに、春夏野菜の収穫後、秋に何を植えるかも考えておきます。この時、連作障害※を避けるため、次に植え植える野菜は、異なる仲間(科)から選びます。例えば、ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモは同じ「ナス科」の作物ですから、ナスを植えた後にジャガイモを植えることは避けます。その他、キュウリ、カボチャ、スイカは「ウリ科」に、エダマメ、ラッカセイ、ソラマメ、エンドウは「マメ科」に属しますので、参考にしてください。
(※同じ仲間の野菜を同じ場所で栽培すると、しだいに生育不良となる現象)

 計画に沿って栽培を進めるうちに、気づいた点(例えば植付間隔が狭かったなど)があれば、区画図に書き込んでいきましょう。1年後に計画を立てる際の参考になります。

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