新規就農にあたってのポイント |
農業を始めるということは、サラリーマン のように会社に就職するのとは違って、 ひとつの事業を起こすということです。自らが「経営者」ですから、「自然が好き」、
「無農薬で野菜を作りたい」、「田舎生活をしたい」、といった憧れだけでは、その経営は成り立ちません。
自立するためには、経営者として生産・出荷・販売に対する客観的な判断が求められます。 起業家としてのビジョンが必要です。また、他産業と同様に資本がなければ、事業は起こせません。
これらの留意点を考え、職業選択肢のひとつとして「就農」を選んでください。
農業で生計をたてることについて、
家族の理解と同意を得ることは最も大切なことといえるでしょう。
家族の方も一緒に農業に従事する場合はもちろんですが、
家族の協力が大きな支えとなることは、間違いありません。
一口に農業といっても、水稲、野菜、花き、果樹等、いろいろあります。 さらに、露地栽培か施設(ビニールハウスなど)栽培かといった違いもあります。
広島市では農地面積が少ないため、
若い専業農家の経営は施設による野菜や花き栽培が中心となっています。
“ひろしま活力農業”経営者育成事業では、葉物野菜(コマツナ、ホウレンソウ等)の 施設栽培を対象にしています。
これは、生育期間が短いため、一度栽培に失敗してもまき直しがきくことや 安定的に周年栽培が可能なことなど、 経営的に安全、有利なためです。
農業はどれくらいの収入が見込めるのでしょうか。
水稲の場合、3,000u(約900坪)作付けすると30万円程度の売り上げで、
経費(特に機械減価償却費)を差し引くと、赤字になるでしょう。
葉物野菜の施設栽培では、同一ほ場に年間約7回作付けすることができ、 同じ3,000uの面積で1,000万円程度の売り上げが見込まれます。
一方、雇用が必要になることや、施設や機械等の投資が必要なため、
経費もかかります。差し引き300万円程度の所得とみておけば良いでしょう。
農業(葉物野菜栽培)を始めるにあたっては、 施設整備費や運転資金等の資本が必要になります。 なお、葉物野菜栽培では、機械、建物、施設等の整備費として、
初期に3,000万円以上の資本が必要となるでしょう。 さらに運転資金や生活費等も考えなければなりません。
このため、資金の借入れを起こす場合もあるかと思います。
その場合には、どの資金が利用できるか、借入れ条件はどうか、
担保、保証人の問題も検討が必要になります。
そこで“ひろしま活力農業”経営者育成事業では、 初期の施設整備費の負担を押さえることを目的に、施設等のリース(JA事業主体)を活用しています。
新規就農する場合、農地の確保が最も大きな課題です。
近年、農村では遊休農地が増えていますが、土地所有者は、農地を貸すことに慎重です。また、効率的な農業経営のためには、いかにまとまった農地を確保することが重要です。
“ひろしま活力農業”経営者育成事業では、効率的な農業経営ができるよう行政や農業委員会等が地域をとりまとめ、最終的に土地所有者から本センターが農地賃借し、研修生に転貸します。
就農予定地(原則小学校区内)に居住することが要件となります。
住居は、営農する場所に近いところが望ましく、 就農予定地(原則小学校区内)の住居(空き家)を紹介します。
空き家の所有者に対し、居住する空き家の改修や家財整理に要する費用については、補助を行う予定です。また、首都圏・関西圏等から転居される方を対象に、基礎研修期間中についても、補助を行う予定です。
農業を職業として選ぶためには、農業経営及び栽培技術を習得しなければなりません。
“ひろしま活力農業”経営者育成事業では、本センター等で研修を行います。
また、研修修了後も関係機関の指導やアドバイス等による支援が受けられます。
農村は閉鎖的とのイメージがありますが、それは先祖代々その地に住み、 住民同士の付き合いの程度が都会と比べて強いというところが大きいのです。
早くその農村にとけ込むためには、集会等に参加するなど 積極的にコミュニケーションをとることが求められますし、 農業協同組合の組合員や生産者の相互研鑚の場である農事研究会の会員となり、
幅広い情報を得る必要もでてくるでしょう。
“ひろしま活力農業”経営者育成事業の修了生は、それぞれの地域で草刈りや水路掃除などの共同作業に参加するだけでなく、消防団等に入会するなど、地域の信頼を得ています。
いずれにしても、新規就農者は農村から地域コミュニティ活動の担い手として活動が期待される存在なのです。
9 地域活動の担い手
近年Tっ遊山官官地域は、人口減少や少子高齢化が家族度的に進み、特に若者の流出により地域活動などの人材不足が懸念されています。担い手となる人材が不足すれば、住民が主体となったまちづくりを維持できなくなり、ひいては地域の魅力や活力の低下に陥る可能性があります。
広島市では、中山間地域における人材不足を解消するために、特に「地域活性化の担い手の確保」に重点的に取り組んでいます。
“ひろしま活力農業”経営者育成事業は、これまで若い農業経営者を育成する農業振興策として取り組んでいましたが、平成30年からは、中山間地域の活性化に資する事業として位置づけ、地域コミュニティ活動の担い手となる定住者を呼び込むため、応募要件に就農地の原則小学校区に居住すること、将来的に地域活性化の担い手として地域活動の運営に積極的に参画することが加えられました。
農業は、自分ががんばった成果が農産物としてはっきり目に見えるものとなります。これを収穫し、出荷する喜びは、農業ならではの醍醐味といえるでしょう。
また、自然を相手に仕事をするのですから、人間本来の姿がそこにあるといえるかもしれません。しかし、自然の厳しさに容赦のないことは、肝に銘じておく必要があります。
農業で成功している人は、能力が高いことはもちろんですが、とにかく作物をつくることが大好きという人です。好きならばこそ頑張って伸びることができるのです。