魚と漁業の資料展示室
ゴリと呼ばれている魚たち

広島市近辺を含む多くの地方で、ハゼのような形の魚は、種類を区別されずにまとめて、「ゴリ」と呼ばれています。
「ゴリ」は、体の大きさがせいぜい20センチ以下で、普段は茶色や灰色の地味な色彩をしていて、石の陰などに隠れて暮らしている、底生性の魚です。
注目されることの少ない彼らですが、産卵期には色彩がとても美しく変わったり(婚姻色)、頭でっかちですが愛嬌のある顔立ちで、仕草もとても愛らしかったりと、観察していてとても楽しい魚達です。
この展示室では、「ゴリ」の展示に力を入れており、その生態や見分け方をパネルやクイズ形式でやさしく学べるようになっていますのでぜひお越しください。
ヨシノボリ属

クロヨシノボリ
体全体がやや黒っぽいのでクロヨシノボリ名付けられました。名前は地味ですが婚姻色の出た大型のオスは、熱帯魚と見紛うばかりに鮮やかな色彩をしています。特に鼻から後頭部にかけて青地に赤の複雑な模様や、尾びれの縞模様は見事です。外洋水の影響を受ける小河川や島しょ部に分布する傾向があります。

カワヨシノボリ
ヨシノボリと言う1種類の魚から分離された時、一生を川で過ごすことからカワヨシノボリと名づけられた。他のヨシノボリ類とは胸鰭の軟条数が15~17本とやや少ない。骨が柔らかく美味しい。

オオヨシノボリ
他のヨシノボリ類より大きく育つのでこの名前がつけられた。特徴は胸鰭の根元の黒色斑で他のヨシノボリ類と区別できる。河川の中・上流域の比較的流れの速い瀬にいることが多い。

トウヨシノボリ
婚姻色のオスの尾鰭に出る橙色斑がこの名の由来である。幼魚やメスにはこの橙色斑が出にくいため判別が困難。琉球列島を除く全国の河川に生息するが比較的流れの緩やかな淵やトロ瀬を好んで生活する。

ルリヨシノボリ
ほほのルリ色の小さな斑紋が散らばるのが最大の特徴で、体側にも見られることが多いです。小河川の上中流部の急流に生息する傾向があります。孵化した仔魚は海に下り、2、3カ月後に川へ遡上します。ダムができると陸封されることが多いです。

シマヨシノボリ
ほほの赤いミミズ状の斑紋が最大の特徴で、判別は簡単です。産卵期のメスの腹が青くなるのも顕著な特徴です。大河川にも小河川にもいますが、中流域の平瀬を好んで生息します。ヨシノボリの中ではやや神経質で、人間が近づくと敏感に反応します。

ゴクラクハゼ
全長12センチ程まで成長する。成魚のメスでは輝白色の斑点が多く、オスではルリ色に輝く斑点も多く混じる。吻(目から口先まで)が長いので面長に見える。河川の汽水域から下流域にかけて生息する。
チチブ属

チチブ
青森から九州まで広く分布する。河川の汽水域から下流域に棲み、礫・転石や人工構造物などに集まり隠れ場とする。雑食性で藻類や各種の無脊椎動物、小型の魚類などを食う。太田川などでハゼ釣りの外道として知られている。

ヌマチチブ
北海道から九州まで広く分布する。チチブより少し上流の下流域から中流域下部に生息する。形はチチブに似るが、胸びれの付け根に橙色の不規則な線があること、ほおの白い斑点が不規則なことなどで区別できる。
ウキゴリ属

ウキゴリ
沖縄を除く全国の河川や湖沼に生息する。川の汽水域から中流域の流れの緩やかな淵やワンドなどに多い。他のハゼ類と違い水中に浮かんで泳いでいることも多い。同属のスミウキゴリに似るが第1背びれの後端部の黒色斑で区別できる。

スミウキゴリ
沖縄を除く全国の河川に生息する。川の汽水域から下流域の流れの緩やかな淵やワンドなどに多く、ウキゴリよりも比較的下流域を好む傾向がある。他のハゼ類と違い水中に浮かんで泳いでいることも多い。同属のウキゴリに似るが第1背びれの後端部の黒色斑が無いことで判別する。
ドンコ属

ドンコ
川の中~下流域及び小川の砂泥域に生息する。動物食でしかも生きたものしか食べない。一般にハゼ類は、孵化後ぜい弱な体のまま浮遊生活を送るが、本種は卵黄吸収時には成魚とほぼ同じ形となっており、すぐに底生生活に入る。このような発育をするのは、日本のハゼ類ではカワヨシノボリと本種だけである。
カジカ属

ウツセミカジカ
北海道南部から九州西部に分布する。広島市では海と川を行き来する本種の他に他に一生を淡水域で過ごすカジカ(カジカ大型卵)が存在する。この2種は形態が酷似するが、胸びれの軟条数がウツセミカジカは13~17、カジカは12~14である。また、ウツセミカジカにはほほと第一背びれ下に広い暗色帯がある。