広島かき


筏式垂下法

波のおだやかな広島湾に浮かぶかき養殖筏

かきができるまでには、採苗、抑制、本垂下、育成、収獲といった順序があります。その中でも広島のかき養殖の方法は、下図に示す方法があります。

広島かき養殖ごよみ

ワカ
昭和18年から43年頃まで行われていた方法で、一年以内に収穫ができるのでワカ(若い)と呼ばれていました。
イキス
採苗、本垂下後、1シーズンの育成期間を経て収穫する方法です。主にシーズン前半〜半ばに出荷されます。
ヨクセイ(早吊、早通しを含む)
その名の通りイキスより長い抑制期間を経て本垂下する養殖方法です。ヨクセイは主にシーズン後半に出荷されます。
ノコシ
ヨクセイ養殖のかきを翌シーズン最初の出荷時用に残しておく養殖方法。
フルセ(残し種・種残し)
イキスは採苗した種を9〜10月に本垂下しますが、フルセは種のまま、もう一年抑制を行ってから本垂下する方法です。収穫パターンはイキスと一緒です。

養殖行程

1 採苗

夏、卵からかえったかきの幼生は、約2週間、浮遊生活を送り、その後、海水中の固着物に付着します。そこでこの時期にホタテ貝の貝殻を海中に入れておくと、かき幼生(約0.3mm)が付着します。このように幼生を付着させることを採苗といい、毎年7月中旬頃から9月中旬頃まで行います。

2 抑制

採苗したかきの種は、採苗連のまま沿岸の棚(抑制棚)に移します。この棚は、干潮の時より高い位置にあるため、採苗連は水中につかっている時間が少なくなります。これは、かきを大きくしないため(大きくなりすぎると翌年の夏の産卵後に死ぬことが多い)と、環境の変化に強い抵抗力を付けさせるためです。

3 本垂下

採苗連からホタテ貝の貝殻をはずして新しい針金(長さ約9m)に、1枚ずつ移し替えて垂下連を作ります。このことを通し替え作業といいます。1つの垂下連には、約40枚のホタテ貝を使います。できた垂下連は、次々に筏に吊し、1つの筏に約600本が吊されます。吊す期間(本垂下時期)は養殖方法によって違いますが、イキス養殖では10月頃、抑制養殖では翌年の6月頃行います。

4 育成

本垂下してから収獲するまで短い期間の養殖方法(イキス養殖)でも12〜13ヶ月かかります。その間、かきが死なないように、有害な生物が付着しないようにし、そして身が良く入るように様々な工夫をしています。その中の1つに深吊育成と直吊育成があります。

・深吊育成:かきは高水温に比較的弱いので、夏の表層の高水温を避けることや、有害な生物(ムラサキイガイ、フジツボなど)の付着を防止するため、深く吊り下げます。

・直吊育成:秋になって水温が下がり、有害な生物も少なくなってきたころ、かきを大きくするために垂下連をエサの植物プランクトンが多い水面近くに吊り下げます

5 収獲

10月から11月になると収獲が始まります。垂下連は9mもあり、かきも大きくなって重くて人間の手ではあがりません。このため、船に約10mの長い柱を立て、ウィンチを用いて巻き上げて収獲します。収獲されたかきは、殻のまま洗浄機で洗い、泥や付着生物(ムラサキイガイ、ホヤなど)を取り除きます。さらに1日きれいな海水プール(浄化プール)に置いてきれいにします。翌日かきは、打娘(うちこ)さんによって1個づつむき身にします。むき身は滅菌海水や清浄海水でよく洗い、出荷されます。